吐き気について

不定愁訴(ふていしゅうそ)による吐き気は、自律神経の乱れや身体への物理的な負担に加えて、「胃や腸の冷え」が大きく関係しています。
最近では、こうした体調不良をすぐに「精神的な病気」や「自律神経の乱れ」と判断し、安定剤やセロトニン(精神を安定させて幸福感をもたらす脳内の物質)の働きを調整するお薬が処方されるケースが増えています。お薬でつらい症状を一時的に和らげることには一定の効果もありますが、お薬だけに頼りすぎてしまうと、冷えや生活習慣、姿勢の崩れといった根本的な原因が置き去りになってしまう問題があります。
吐き気が起きる仕組み

身体の中で起こっている主な原因は以下の通りです。

- 胃や腸の「冷え」による消化吸収の低下
胃の中が37度を下回ると(36度5分など)、タンパク質を分解する胃酸(消化酵素)が十分に働かなくなり、食べ物が溶けず消化が進みにくくなります。また、腸の中も37度ないと、乳酸菌などの善玉菌(ぜんだまきん)がうまく働けず、消化吸収が滞ります。食べ物が胃や腸に長くとどまるため、体が「次の食べ物がほしい」状態にならず吐き気が起こります。 - 自律神経(じりつしんけい)のバランスの乱れ
ストレスや睡眠不足により身体が緊張状態(交感神経が優位)になると、胃腸の血流が減り、正常に動かなくなって吐き気が生じます。 - 胃酸の逆流による胸やけ
姿勢の崩れや食べ過ぎなどで胃の入り口にある弁がゆるむと、強い胃酸が食道へ逆流し、胸やけや呑酸(どんさん:酸っぱい水が口まで上がる感じ)が起こります。 - 脳の拒否反応(吐き気)
胸やけや吐き気の苦しさを繰り返すと、脳が「食べ物を入れると気分が悪くなる」と学習して食欲を抑え込んでしまいます。 - 精神的ストレスによる嘔吐中枢(おうとちゅうすう)への刺激
不安やプレッシャーを感じると、脳の「吐き気を命令する場所」が直接刺激され、実際に胃に異常がなくても吐き気が引き起こされます。


お薬との向き合い方と頼りすぎることの問題点

原因がはっきり特定できない体調不良に対して、精神科や心療内科でお心を落ち着かせるお薬や、セロトニンなどに働きかけるお薬が使われる機会が多くなっています。
- お薬の役割
激しい症状を一時的に抑え、身体と心を楽にするという意味では、お薬の服用も有効な選択肢の一つです。 - お薬だけに頼りすぎるリスク
お薬は症状の感じ方を和らげるものであり、胃腸の温度を上げたり、姿勢の悪さを治したりするものではありません。お薬だけに依存してしまうと、飲むのをやめたときに症状が再発したり、根本的な体調の乱れが改善されないままになったりするおそれがあります。
お薬に頼りすぎない日常の根本改善方法

胃腸への負担を減らし、身体を温めて自律神経と姿勢をご自身で整えていくための具体的な対策です。
1. 食事の工夫(胃腸の冷えと負担を減らす)

- 温かく消化の早い食べ物を選ぶ
おかゆ、煮込みうどん、豆腐など胃にとどまる時間が短い食材を選びます。胃や腸を冷やさないためにも冷たい飲み物や食べ物は避け、温かいものを摂ります。油っこい料理、辛い刺激物、カフェインも避けます。 - 1回の量を減らして小分けにして食べる
一度にたくさん食べると胃酸が大量に出て逆流や吐き気の原因になります。1回の量を減らし、1日4〜5回に分けて食べます。 - 食後2〜3時間は横にならない
食べた直後に横になると重力が使えず、胃酸が食道へ逆流しやすくなります。食後は体を起こした状態で過ごします。
2. 姿勢と自律神経の調整




- 猫背を直して胃の圧迫を防ぐ
長時間のスマホ操作などで背骨が丸まると、お腹が圧迫されて胃酸が上に押し出されます。背筋を伸ばし、お腹を押し潰さない姿勢を保ちます。 - ゆっくり吐き出す腹式呼吸(ふくしきこきゅう)
吐き気や緊張を感じたときは、4秒かけて鼻から息を吸い、8秒かけて口からゆっくり吐き出します。リラックスを司る「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」が働き、胃腸の緊張が和らぎます。 - ツボに働きかける、円を描くようにマッサージ
両手をすり合わせて温めたら、手のひら全体を使って、
おなか全体を右回りに最初は小さな円を描きます。だんだんと大きな円へと広げていきましょう。これを目安として10回繰り返してください。